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研究TOPICS

紙?パルプ素材のまだ見ぬ可能性に着目し、環境負荷の少ない新材料の開発を目指す! 農学部 環境資源科学科 再生資源科学研究室 研究室では、教員と学生が一対一で対話する時間を長く持つことで、一人ひとりが自らの興味を追究し、
個々の目標に向けたアウトプットができるようにサポートしている。

紙やパルプといった植物由来の物質を使って、環境にやさしい材料をつくる研究を進めています。最近はレジ袋の有料化や紙ストローの導入など、環境汚染を引き起こすプラスチック製品の利用を抑える取り組みを目にします。その一方で、このままIT化が進行すると、携帯電話やパソコンなどのデバイス、ロボットが社会にあふれるはずです。従来はそうした電子機器の部品にもプラスチックが使われてきましたが、より環境負荷の少ない材料が必要になってくるのです。

そこで期待されるのが紙やパルプです。特に注目すべきは、紙やパルプに「生分解性」があること。生分解性とは、自然界の微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素に分解される性質のことを言います。紙やパルプはセルロースという自然界にある分子構造を保持したままつくられるので、ゴミになってもやがて自然に還っていく。生分解性を持たないプラスチックと比べると環境負荷を抑えることができます。また、紙やパルプの主な原料である木材は石油のように枯渇することがない再生可能資源であることも、持続可能な社会の実現に向けた利点のひとつです。

この紙やパルプを使って研究開発に挑戦している事例のひとつが、本学の農学部と工学部の研究室が共同で取り組んでいる「カミロボ」プロジェクトです。私たちのミッションは、紙を使ってロボットのボディパーツをつくること。自然界の分子構造を変えないまま必要な性能を出すために、木材から得られるパルプの繊維をナノサイズにまで細かくした「セルロースナノファイバー」を製造して応用するといった試行実験も行っています。

本学に入学する学生の中には、自然を守りたいという気持ちや環境問題を解決したいという思いを持った方が多いと思います。その実現の一助となるような材料開発を通して、環境を大事にしながら自らの人生も豊かにしていく方法を見つけてほしいと思っています。

紙?パルプ素材を用いて、材料開発や紙の保存技術を研究している
農学部 応用生物科学科 笠原 博幸 教授

農学部 環境資源科学科

小瀬 亮太 准教授

九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻博士後期課程 修了。博士(農学)。北海道大学大学院工学研究院博士研究員などを経て、2020年より現職。

Student's Voice

青木 迅さん

大学院農学府
環境資源物質科学プログラム修士課程2年
青木 迅さん

埼玉県立川越高等学校出身
製品製造時に金型を使わずに紙?パルプ素材を3次元的に成形するための技術を研究中。セルロースナノファイバーが持つ高い収縮力を利用し、再現性を持って自然に成形できるようにするのが目標です。

大類夏帆さん

大学院農学府
環境資源物質科学プログラム修士課程1年
大類 夏帆さん

私立創価高等学校出身
ロボットのアームの部分を紙?パルプ素材で形成することを目指し、十分な強度を持つ多層板紙の作製に挑戦しています。工学部の研究室との実際のロボットを使った試行実験に刺激を受けています。

池田昌矢さん

農学部 環境資源科学科4年
池田 昌矢さん

私立麻布高等学校出身
時間とともに劣化する酸性紙などの古い紙を良い状態で保存し続けるために、微細セルロースナノファイバー(FCF)の特性を利用した 強化処理の方法を模索中。FCは透明なので、塗工しても文字の判読性を保てるのが面白い点です。

※掲載内容は、2022年11月取材時のものです。